【小説】1人の女性が叶えた「幸せの形」とは?『哀愁しんでれら』

幸せになりたい」と思ったことがありますか?

皆さん一度は思ったことがあるでしょう。この物語の主人公「福浦咲良(ふくうらさくら)」もそんな女性の1人でした。

出典 : 公式website

 

にゃるら
【注意】多少のネタバレを含みますが、オチについては触れていません!基本的には、作品内の文章を引用しての考察や注目ポイントの紹介です!!

哀愁しんでれら」は、2016年「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」にてグランプリ企画に選ばたことで、202125日に主演土屋太鳳・田中圭にて映画化が決定されました(Website)。その後「哀愁しんでれら-もう一人のシンデレラ-」として202012月に映画脚本を基に、双葉文庫から出版されます。「なぜ、その女性は社会を震撼させる凶悪事件を起こしたのか?」小説作品について掘り下げていきましょう!!

こんな人におすすめ

  • 湊かなえ作品(イヤミス系統)が好きな方
  • 心理描写が緻密な作品を好む方
  • 特に女性におすすめ(共感ポイントが多い)

イヤミス小説は、事件のことだけではない人間の奥に潜む心理などを描写し、見たくないと思いながらも読み進めてしまう、嫌な汗がたっぷり出るような後味の悪い小説のことを指します。

著者について

著者は、早稲田大学文学部を卒業後、ロヨラ・メリーマウント大学院にて映画・TV制作修士号を取得した「秋吉理香子」さん。他の作品に「雪の花」、映画化され話題となった「暗黒女子」があります。特に「暗黒女子」と「哀愁しんでれら」に共通する点としては、人間の奥底にある闇を描いていることです。

【暗黒女子あらすじ】名門セレブ女子高である聖母マリア女子高等学院で、学園一の人気を誇るカリスマ、白石いつみが謎の死を遂げます。

白石いつみが主宰していたサークルの中に、彼女を殺した犯人がいると学園内では嫌な噂が流れ始めましたが、いつみの親友の澄川小百合は、サークルの会長を引き継ぎました。小百合は、部員たちが自作した物語の朗読会を開催し、いつみの死の真相に迫ろうとします。

小百合が提案した物語のテーマは「いつみの死について」。犯人を告発する物語を一人ひとり発表していくことになり、5つの物語の中に隠された真実と不穏な空気が5人の少女たちを取り囲みます。

注目ポイント

  1. 完結で平易な文体
  2. 主人公の女性的な視点
  3. 幸せへの執着

【哀愁しんでれら/あらすじ】                                              ただ幸せになりたかったはずだった――市役所の児童福祉課で働く咲良は、8歳の娘・カオリを男手ひとつで育てる開業医の孝太と出逢い、結婚。誰もが羨む幸せな家庭を手に入れた。しかし、「理想の家庭をつくる」という咲良の願望は知らぬ間に自身追い詰め、次第に家族の歯車を狂わせていく……。

▶主な登場人物
福浦咲良(ふくうらさくら)
児童福祉課で働く26歳の独身女性。「シンデレラ」に強い憧れがあり「不幸な境遇からいつか王子様が救ってくれるのではないか」と切に願っている。時折、空気が読めない点も散見される不思議な女性。映画では土屋太鳳が演じている。
「泉澤康太(いずみさわこうた)」
開業医で41歳のエリート。交通事故で妻を亡くし、現在はカオリと2人暮らし。比較的プライドが高く、娘を溺愛している。趣味は陶芸。映画では田中圭が演じている。
「泉澤カオリ(いずみさわかおり)」
小学2年生で8歳の少女。母親を交通事故で亡くした影響か、心に闇を負っている。「母親」を亡くしてからは「母親」に対してより強い執着を持っている。映画では、インスタグラマーのCOCOが演じている。

完結で平易な文体

文体や語彙自体は比較的平易で「どういう意味?」となることはほとんどありませんでした。また、全体を通して253ページと短いため「仕事休憩の合間」や「寝る前」なんかにサクッと読むことができる点も魅力です。主な登場人物は「福浦咲良(ふくうらさくら)」「泉澤康太(いずみさわこうた)」「泉澤カオリ(いずみさわかおり)」の3名。物語は、彼らそれぞれの「心情」をベースに語られていきます。これが何を意味するかと言うと、見えているものが真実ではないということ。例えば、AさんがBさんに道を尋ねてきたとしましょう。「ありがとうございます」と最後Aさんが言ったとしても、通常の小説ならBさんが考えていることは記載されません。しかし「哀愁しんでれら」では、同一の事象に対しても三者三様の解釈をしているという点が如実に表されます。

主人公の女性的な視点

著者が女性である点や主人公が幼い頃に母親を亡くしている点から「女性的な視点」の多い作品であると感じました。作中では「結婚」「子ども」「幸せ」等々がキーワードとして何度も登場します。特に、冒頭の咲良の幼馴染の恵美が言った「まだ子供いないんだし」や児童虐待を行った可能性のある母親から言い放たれた「子供もいないくせに、えっらそーに」という言葉は社会的なプレッシャーを感じる現代社会へのメッセージが皮肉交じりに込められていると感じます。

幸せへの執着

「女の子なら、誰だってシンデレラに憧れる」という冒頭から、この物語はスタートします。様々な人から無下に扱われ、孤独ながらも精一杯仕事に励んだシンデレラは、皆さんもご存知の通り、最終的には王子様に出会うことで末永く幸せに暮らします。主人公である咲良は、ドラマ性欲求が高く、まるで青い鳥症候群にかかっているかのような印象を受けました。ただ「幸せになりたい」とは、誰もが思うものです。彼女の場合、その思いが強すぎることや不幸が重なったという点が物語のキーポイントと言えるでしょう。このように一歩歯車が狂えば、簡単に主人公の咲良のような状況になるかもしれないという妙な親しみやすさが作品をよりリアルに、面白くしていると言えます。

心に残った文章

①咲良の幼馴染の恵美「まぁ、咲良がいいなら、わたしは何も言えないけどさ、でも、咲良もそろそろ自分の幸せを考えなよ。」

→ほとんど努力もせずに「幸せ」を手に入れた恵美と一生懸命な努力も実らず未だ「幸せ」をつかみ取れない咲良の対比が如実に示されている場面。咲良が自分自身の「幸せ」に関して再考するキッカケとなる。

②咲良「子供の将来は、その母親によって決まる」

→児童福祉課の一室での発言。幼い頃、実の母親に見捨てられた咲良の「母親像」が垣間見える一言。

③咲良「シンデレラっていう名前は、灰かぶり姫っていう意味なんですね...(中略)自分のベッドを与えられなくて、かまどのある部屋で横になるしかなくて、髪も体も灰まみれだから灰かぶり姫。それでも、いつも笑顔を絶やさず、誰にでも親切でいたから、最後には美しいお姫様になれるってことです」

→咲良が康太に述べた一言。自分の不幸がいつか報われるのではないか、王子様がシンデレラにしてくれるのではないかという願望が示されている。

最後に一言

いかがでしたでしょうか?哀愁しんでれら-もう一人のシンデレラ-」は読みやすく、考えさせられる部分も多い作品のため個人的には非常におすすめです!メンタルが強そうな彼女も、会社でバリバリ働いている彼も、私生活では意外な面があったりします。基本的には礼儀正しいにも関わらず、レジの店員さんには冷たかったり、逆に普段の口調は荒いのに、トラブルの時は優しい言葉をかけてくれたり。人間を一面的に捉えるのではなく、多面的に捉えていくことの大切さを僕自身はこの作品から学びました。皆さんも、考察や注目ポイントを手さぐりに、自分なりに感じたことをシェアしてくださいね♪